西武池袋線が静かに走り抜ける街、東久留米。朝の駅前には通勤客の足音が重なり、夕方には買い物袋を手にした人々が穏やかに行き交います。この地で三十年以上にわたり住まいづくりと向き合ってきた経営者がいます。株式会社東京住建の代表取締役、小島宏和氏です。1991年の設立以来、地域に根ざした工務店として歩みを重ね、いまでは独自の強みを持つ建築企業へと会社を導いてきました。
社長と聞けば、デスクの奥で指示を出す姿を思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし小島氏の日常は、そうしたイメージとは異なります。現場へ足を運びます。顧客と直接会います。図面を広げ、細部を確認します。
現場に立ち続けるトップの姿勢
肩書きは代表取締役。それでも動き方は営業担当に近いものがあります。
取引先との打ち合わせに同席し、土地の状況を自ら確認し、難しい案件には率先して関わる。社員の間では「社内で一番外に出ているのは社長だ」と語られるほどです。誇張ではありません。
指示を出すだけの立場に収まらない。自ら動く。その姿を日常的に目にしているからこそ、若手も自然と背筋を伸ばします。組織の空気はトップで決まると言われますが、東京住建はまさにその典型でしょう。
三十二年という年月は偶然の産物ではありません。派手な拡大路線でもない。現場主義の積み重ね。その延長線上に現在地があります。
困りごとを見過ごさない
相談が舞い込めば、まず耳を傾ける。条件の厳しい土地、複雑な法規制、限られた予算。通常なら慎重になる場面でも、いきなり否定はしません。どうすれば実現できるかを考える姿勢です。
「他社で断られました」と打ち明ける顧客も少なくありません。そこで簡単に線を引かず、図面を描き直し、行政に問い合わせ、法令を確認し直す。正面から向き合う。
可能性を一つずつ検証する作業は根気を要します。その姿勢が評判を生み、「東京住建なら相談してみよう」という声につながってきました。
二か月間の密着同行
東京住建の新人教育には特徴があります。入社後、およそ二か月間は社長に同行する期間が設けられています。営業先に同席し、商談の様子を間近で学びます。
トップの思考回路を直接体験できる時間です。若手にとっては濃密な修行期間といえるでしょう。
話の聞き方。質問の投げかけ方。沈黙の取り方。数字の示し方。教科書では学びにくい部分を体感します。わからないことがあればその場で尋ねられる距離感も大きい。肩書きによる壁は感じにくいといいます。
小島氏は自身の失敗談も隠しません。うまくいかなかった商談の振り返りや判断ミスの共有。経験は独占するものではないという考え方です。こうした土壌が、未経験者でも着実に成長できる環境を支えています。
発想を否定しない風土
社内は過度に上下関係を意識する雰囲気ではありません。若手が「こんな住宅に挑戦してみたい」と提案すれば、まずは耳を傾けます。実現性を一緒に検討する姿勢です。
ガレージハウスやボートハウスといった個性的な住宅が形になった背景には、この柔軟さがあります。型に収まらない発想を頭ごなしに否定しない文化。
もちろん無計画な挑戦はしません。リスクを洗い出し、採算性を確認し、法的な制約も精査する。慎重さと挑戦心の両立。組織を硬直させないためのバランス感覚です。
保守的とされる不動産業界にあって、少し異なる空気が流れています。
狭小地という舞台
東京23区内には、三角形や細長い形状の土地が点在します。建築条件が厳しい案件も珍しくありません。一般には敬遠されがちな物件です。
限られた面積をどう活かすか。吹き抜けを設けるのか、スキップフロアにするのか。窓の位置や高さを変えるだけで印象は大きく変わります。
その取り組みは住宅専門誌やテレビ番組で紹介され、大手企業のCMロケ地に採用された事例もあります。特別な演出を狙った結果ではありません。目の前の土地と真剣に向き合った積み重ね。その延長に評価があります。
東久留米という原点
本社は東久留米駅東口から徒歩二分の場所にあります。駅前商店会にも加盟し、地域行事にも参加しています。
不動産は人生で何度も経験する取引ではありません。大きな決断だからこそ、顔の見える関係を重視しています。「親戚に相談するような気持ちで来てほしい」と語る背景には、地域密着の姿勢があります。
努力が報われる仕組み
経営者として小島氏が掲げる方針の一つが、努力を正当に評価することです。営業成績は賞与やインセンティブに反映されます。成果が数字として返ってくる仕組みです。会社だけが利益を抱えるのではなく、働く人に還元する。組織を強くするための考え方です。
評価が明確であれば目標も定めやすい。前向きな競争が生まれます。健全な緊張感が社内に広がります。
学びを後押しする環境
建築・不動産分野では資格が大きな武器になります。東京住建では国家資格取得を目指す社員に対し、受験費用を会社が負担します。通学日は早めの退社を認めるなどの配慮もあります。
知識が増えれば提案の幅が広がります。顧客への説明にも説得力が生まれます。結果的に会社全体の底上げにつながる。短期的な利益よりも、長期的な成長を見据えた取り組みです。
働きやすさへの配慮
不動産業界は忙しいという印象があります。東京住建では月の平均残業時間を二十時間未満に抑えています。効率化の工夫が背景にあります。
ノートパソコンの支給により外出先で事務作業が可能です。書類作成は専門スタッフが支援します。役割分担を明確にすることで無駄を減らしています。
仕事と生活の両立を意識した体制づくり。住まいを扱う会社として、自らの働き方にも目を向けています。
まとめ
設立から三十二年。オフィスのリニューアル計画も進行しています。来客にとっても社員にとっても快適な空間を目指す取り組みです。
施工エリアは東京23区が中心ですが、多摩地区への展開も視野に入れています。規模が広がっても原点は変わりません。顧客の思いを丁寧にくみ取ること。難題から逃げないこと。
一級建築士事務所としての責任。地域企業としての誇り。
小島宏和氏の背中を追いながら、社員たちは今日も現場へ向かいます。東久留米の空の下、新しい住まいの物語が静かに動き出しています。温かさと専門性を併せ持つ集団。それが株式会社東京住建です。今後も多くの家族の暮らしを支えていく存在であり続けるでしょう。


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